映画の圧倒的な空気感を支えているのが、山形県山形市高瀬地区(JR仙山線・高瀬駅周辺)のロケーションです。映画公開から長い年月を経た現在、おもひでぽろぽろ 舞台 山形県高瀬の現在はどうなっているのでしょうか。現地を取材すると、アニメが遺した文化的価値と、地方都市が直面する現実の双方が浮かび上がってきます。
高瀬駅周辺には、今も初夏になると鮮やかな黄色から赤へと移ろう紅花畑が広がっています。毎年7月上旬には「山形紅花まつり」が開催され、現在も全国各地からジブリファンや観光客が聖地巡礼に訪れます。高瀬駅の駅舎には作品に関する案内展示が残され、タエ子が降り立ったホームの静寂は当時の面影を色濃く残しています。
しかしその一方で、農業従事者の高齢化や後継者不足という波は確実に押し寄せています。紅花摘みは映画でトシオが語った通り、早朝の朝露が乾かぬうちに手作業で棘を避けながら収穫せねばならず、極めて重労働です。地域の保存会や地元有志の献身的な活動によって伝統的な景観と栽培技術が維持されているものの、映画が描いた「循環型農業への理想」は、現代においてより切実な維持の課題を抱えています。映画の世界を追体験しに現地を訪れる旅人は、郷愁の美しさとともに、一次産業を守り続ける過酷な営為の重みを実感することになります。