サッカーにおけるティキタカの本来の意味は、選手同士が短い距離感を保ちながらワンタッチ、ツータッチの極めてテンポの速いショートパスを連続して繋ぎ、ボール保持率(ポゼッション率)を高めて相手の守備網を崩していく戦術スタイルの呼称です。
この印象的な言葉の語源と由来は、スペインで親しまれているプラスチック製の玉をカチカチとぶつけ合って鳴らす玩具「ティキタカ(アメリカ名:クラッカーズ)」の擬音にあります。2006年ドイツW杯のスペイン国営テレビの中継中、名物アナウンサーのアンドレス・モンテス氏が、リズミカルにパスを繋ぐ代表チームの軽快なボール運びを「ティキ、タカ、ティキ、タカ、チカス!(カチ、カチ、小気味よくいこうぜ!)」と実況したことで、フットボール界の共通言語として一気に定着しました。
一般的なポゼッションサッカーの特徴と仕組みが「ボールを保持して試合の主導権を握る」という広義の概念であるのに対し、ティキタカはピッチ上に無数の「三角形」を形成し、ボール保持者に対して常に2つ以上の安全なパスコースを作り続けるという、極めて厳格かつ精密な幾何学的ルールに基づいています。守備陣がボールを奪おうと前に出ればその背後のスペースを突き、相手が引いて守れば左右に揺さぶってわずかな綻びを生み出すという、相手のリアクションを先読みした究極の能動型アプローチでした。
なお、この小気味よい言葉のリズムはサッカー界の枠を飛び越え、ビジネスシーンや若者の間でも会話におけるスラングとして使われるようになっています。「会議でティキタカする(息の合ったテンポの良い議論が続く)」「あの2人はティキタカが合わない(会話のキャッチボールが噛み合わない)」といった表現は、阿吽の呼吸でレスポンスを返すコミュニケーションの比喩として広く定着しています。