大阪市西成区の萩之茶屋エリアを中心に広がるあいりん地区では、かつて高度経済成長期を支えた日雇い労働者の高齢化が進み、街の様相は劇的な変化を遂げています。大阪市と大阪府が推進する「西成特区構想」のもと、JR・南海電鉄の新今宮駅周辺には星野リゾートをはじめとする観光商業施設が定着し、かつての簡易宿泊所街(ドヤ街)はバックパッカーや外国人旅行客向けの低価格ホテルへと転換が進みました。
しかし、街の景観がクリーン化される一方で、支援を必要とする路上生活者や低所得高齢者の「居場所」を巡る問題は、むしろ深刻度を増しています。特に、雨風をしのぎ一夜を過ごすための臨時夜間シェルターや福祉施設の機能維持は、行政と地域支援者の間で最も先鋭化している論点のひとつです。
行政発表資料や福祉関係者の証言によると、地区内の野宿生活者数はピーク時の数千人規模から大きく減少したものの、現在も認知症や精神疾患、身体障がいを抱え、通常の住居確保が困難な層が一定数存在します。再開発の推進とセーフティネットの維持という、一見相反する命題をどのように両立させるかが問われています。