自転車は糖尿病に極めて有益である反面、やり方を誤ると生命に関わる事態を招きかねません。「自転車に乗って逆に体調を崩した」「倒れそうになった」というケースの背景には、主に低血糖と合併症への無理解があります。
特にSU薬(スルホニル尿素薬)を服用している方や、インスリン注射を行っている方は、運動中および運動直後の「低血糖」に対する厳重な警戒が必要です。運動によって筋肉が糖を一気に消費するため、急激に冷や汗、動悸、手足の震えなどの低血糖症状が現れることがあります。公道を走行中に低血糖発作を起こせば、意識を失って大事故に直結します。
低血糖を防ぐための鉄則は以下の通りです:
- 空腹時や食前には絶対に自転車に乗らない(必ず食後に走る)
- ブドウ糖や糖質を含む清涼飲料水を常にポケットやサドルバッグに常備する
- 走行前後に血糖自己測定(SMBG)や持続血糖測定器(CGM)で数値を把握する
さらに、進行した糖尿病合併症を抱えている場合は、運動そのものが病状を悪化させる引き金になります。例えば「増殖前・増殖糖尿病網膜症」がある場合、血圧の上昇によって眼底出血や網膜剥離を引き起こす恐れがあります。また「重度の糖尿病腎症」では腎血流量が低下してタンパク尿が増加するリスクがあり、「自律神経障害」がある場合は急激な血圧変動や心拍異常を自覚しにくくなります。
自己判断でペダルを強く踏み込む前に、必ずかかりつけ医に「自転車による運動療法を始めてよい状態か」を確認し、許可を得てからスタートすることが鉄則です。