なぜ本来の冬眠行動をとらないクマが増加しているのか。その背景には、単一の要因では説明できない複数の環境変化が連鎖しています。
第1の要因は、秋季におけるブナやミズナラなど堅果類(ドングリ)の凶作です。クマは冬眠期間中の約4〜5ヶ月間、一切の摂食・排泄を行わずに生命を維持するため、秋の間に大量の脂肪を蓄積しなければなりません。しかし、山林のエサが著しく不足すると、体脂肪率が冬眠に必要な水準に届かず、生理的に冬眠状態へ移行できない個体が発生します。
第2の要因として見逃せないのが、地球沸騰化に伴う暖冬傾向と積雪時期の遅れです。外気温が氷点下に安定せず、初雪のタイミングが遅れることで、クマの体内時計を司るメラトニン分泌や代謝低下のスイッチが正常に入らなくなります。その結果、本来なら巣穴で眠りにつくべき時期を過ぎても活動を継続してしまうのです。
さらに決定打となっている第3の要因が、都市近郊に居座る「アーバンベア」の定着化です。人里周辺には、放置された未収穫の果樹(柿や栗)、農作物の残渣、家畜飼料、そして生ゴミなど、季節を問わず高カロリーな食料が溢れています。「冬眠しなくても年中エサが手に入る」と学習した個体にとって、過酷なエネルギー消費を伴う冬眠そのものの必要性が薄れつつあるという衝撃的な生態シフトが指摘されています。