人間は他の哺乳類と比較して、本来それほど妊娠効率が高い種ではない。世界保健機関 (WHO) の基礎研究や世界的な生殖統計によれば、20代の健康な男女が最も妊娠しやすい排卵期にタイミングを合わせた場合でも、1周期あたりの妊娠率は約20〜30%程度とされる。年齢が30代半ばに達すれば、その数値は10〜15%前後にまで減少する。
裏を返せば、最適なコンディションが整っていれば、初回であっても2〜3割の確率で受胎が成立する。これを「奇跡」と呼ぶか「十分あり得る確率」と捉えるかは人それぞれだが、医学的には十分に説明がつく確率の範疇だ。射精された数億匹の精子のうち、卵子の待つ卵管膨大部に到達できるのはわずか数十〜数百匹。その中の選ばれし1匹が透明帯を突破する劇的なドラマは、確率の数字以上に濃密な生命現象である。