凄惨な運命に翻弄される柏木小梅役を圧倒的な透明感と迫真の演技でこなしたのが、女優の大路恵美です。兵庫県出身の大路は、ビクター・甲子園ポスターのキャンペーンガールなどを経て、本作のオーディションに合格。当時17歳、現役の高校生としてこの重責に挑みました。
後年のインタビューや手記において、大路恵美は「台本を渡され、先の展開を読んだときはあまりの衝撃に言葉を失った」と述懐しています。自身の経験値を超えた過酷なシチュエーションに戸惑い、精神的にも追い詰められそうになる中、大きな心の支えとなったのが長女・小雪役を演じた酒井法子をはじめとする共演陣の温かな配慮でした。
特に話題を呼んだエピソードとして、撮影期間中に大路が私生活で財布を紛失して途方に暮れていた際、その様子に気づいた酒井法子が「これで帰りなさい」とそっと3万円を手渡して励ましたという温かな逸話があります。血は繋がっていなくとも、現場全体が本当の家族のような連帯感で結ばれていたからこそ、あのような極限の悲劇と再生の物語を演じ切ることができたと証言されています。
大路恵美のその後の経歴は、単なるアイドル的女優にとどまりませんでした。NHK大河ドラマをはじめ、時代劇や『相棒』『土曜ワイド劇場』といったサスペンスドラマの常連として重宝され、卓越した演技力を持つ本格派バイプレイヤーとして確固たるキャリアを確立。舞台公演や朗読劇などでも精力的に表現を深め、円熟味を増した存在感で今なお業界内から高い信頼を寄せられています。