日本酒発祥の地はどこ?奈良・島根・伊丹の起源説を徹底検証

日本酒発祥の地はどこ?奈良・島根・伊丹の起源説を徹底検証

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中世の日本において、最先端の学問と技術が集積していたのは大寺院でした。なかでも奈良市郊外の山間に位置する菩提山正暦寺(ぼだいせんしょうりゃくじ)は、室町時代に現代の吟醸酒造りにも直結する画期的なイノベーションを次々と生み出しました。

当時、正暦寺で醸造された酒は「菩提泉(ぼだいせん)」と呼ばれ、寺院が造る上質な酒「僧坊酒」の最高峰として全国にその名を轟かせました。正暦寺が日本酒の技術的発祥地とされる理由は、主に4つの技術革新にあります。

  • 諸白(もろはく)造りの発明:それまで麹米に玄米、掛米に精白米を使う「片白(かたはく)」が主流だったのに対し、麹米・掛米の双方に高精白の白米を用いる「諸白」を開発。雑味のない洗練された味わいを実現しました。
  • 酒母(菩提酛)の育成:乳酸菌の働きを活用して酸度を高め、雑菌の繁殖を抑えながら安全に酵母を純粋培養する「菩提酛(ぼだいもと)」の技法を確立しました。
  • 三段仕込みの原形:急激な発酵崩れを防ぎ、糖化とアルコール発酵のバランスを保つ多段階仕込みを考案しました。
  • 火入れ(低温殺菌法)の実用化:フランスの細菌学者パスツールが提唱する300年以上も前に、60℃前後の低温加熱で微生物を不活性化させ、酒の腐敗(火落ち)を防ぐ保存技術を運用していました。

寺院内には「日本清酒発祥之地」の記念碑が建立されており、現在も奈良県内の蔵元有志によって結成された「奈良県菩提酛による清酒製造研究会」が、正暦寺の湧水と伝統の酒母を用いて「菩提泉」の復刻醸造を継続しています。

山口 彩花
著者

山口 彩花

グルメと旅を愛するフリーライター。全国各地の隠れた魅力を独自の視点から紹介します。