朝もやが立ち込める函館山の手、大町の坂道を登ると、おとぎ話から飛び出してきたかのような和洋折衷の建物が現れる。大正末期から昭和初期の建築様式を今に伝える意匠は、SNSで演出された人工的なレトロとは一線を画す本物の風格を纏っている。
訪れる客の層は一変した。以前は近隣のお年寄りが中心だったが、ここ数年はZ世代やミレニアル世代の姿が目立つ。背景にあるのは、単なるノスタルジーへの憧れだけではない。効率主義や画面越しの体験に疲弊した人々が、五感で触れられる実体のある「温もり」を求めてこの場所にたどり着いているのだ。