1980年代後半の『りぼん』黄金期、陸奥A子や一条ゆかりらが築き上げた繊細で甘酸っぱい少女漫画の世界線に、突如として激震が走った。佐々木光太郎という過保護すぎる父親の暴走を描いた『お父さんは心配症』の登場である。勢いあまる線描、ハイテンションなセリフ回し、そして従来の少女漫画にはあり得なかった顔芸と体当たりギャグ。読者は腹を抱えて笑い転げると同時に、「一体どんな人物がこれを描いているのか」という強烈な興味を抱かざるを得なかった。
しかし、バブル景気に沸きタレント漫画家やメディア露出が急増していた当時の空気に反し、彼女は一貫して表舞台を避けた。単行本の著者近況欄に掲載されるイラストすら極めて抽象的、あるいは自虐的なキャラクター化がなされており、写真はおろか具体的な自画像すら提示されることはなかったのだ。このストイックな距離感が、結果として作家像の神秘性をいや応なしに高めていくことになる。