まず、句の輪郭を正確に捉えるために、現代語訳と基本的な意味、鑑賞のポイントを整理します。
【現代語訳】
「穏やかな春風が心地よく吹いていることだ。その春風のなかに身を置きながら、私は胸の内に熱い闘志をたぎらせて、ひとり丘の上に立っている。」
【意味と情景】
春の訪れを告げるやわらかな風を受けながら、作者である高浜虚子が毅然とした佇まいで丘の上に立っています。周囲を包む自然環境はどこまでも長閑で平和そのものですが、胸中にはこれから挑む戦いに向けた激しいエネルギー(闘志)が満ちています。外的世界の「静けさ・穏やかさ」と内的世界の「動意・情熱」が鮮烈なコントラストを描いている点が、この句の最大の魅力です。
【作者の心情】
一見すると孤立しているようでありながら、決して弱気にはならず、自らの信念を貫き通す強い意志がみなぎっています。大正2年(1913年)、小説執筆から再び俳句の世界へ本腰を入れて復帰するにあたり、自らを鼓舞し、俳壇に宣戦布告する気概がそのまま17音に凝縮されています。