日本のトイレットペーパー製造技術や温水洗浄便座の機能美は、世界中から高く評価されている。しかし、その高水準な衛生環境が裏目に出て、過剰な清潔志向から「お尻を過剰に磨き上げてしまう」現代人が後を絶たない。
都内の大腸肛門科クリニック院長は「紙に汚れがまったくつかなくなるまで、何度も力一杯拭き直す患者さんが非常に多い。だが、それは皮膚にとって自傷行為に近い」と強く懸念する。肛門周囲の皮膚は、まぶたの皮膚と同じくらい薄く繊細だ。本来は薄い皮脂膜によって保護されているが、何度も紙で往復運動を繰り返すことで、このバリアが根こそぎ削ぎ落とされてしまう。
結果として生じるのが、激しい痒みやヒリヒリ感を伴う「肛門湿疹」である。一度バリア機能が壊れると、わずかな便の付着や汗の成分がダイレクトに刺激となり、痒みが強まってさらに擦ってしまうという悪循環に陥る。清潔を目指した行動が、かえって病気を作り出しているのだ。