野菜を買って帰るだけの場所なら、いつかは飽きられる。運営陣が次の一手として仕掛けたのが、敷地周辺の耕作放棄地を再生させたアグリツーリズム(観光農業の本格展開だ。
来訪者は長靴に履き替え、プロの農家から手ほどきを受けながら、土から直に大根を引き抜く。泥を洗い流し、その場で薄くスライスして粗塩だけで食す。スーパーのラップに包まれた切り身しか見たことのない都会の子供たちが、目を丸くして歓声をあげる瞬間だ。直売所はただ食材を並べる場所から、「命をいただく過程」を五感で学ぶ体験型教育の拠点へと進化を遂げた。
週末に開催される収穫ワークショップは、予約開始から数分で枠が埋まる人気ぶりを見せている。土に触れ、汗を流した後に飲む石狩産大豆の冷たい豆乳は、どんな高級レストランのディナーにも代えがたい記憶を刻み込む。