「前歯の八重歯だけが気になるから、費用を抑えて短期間の部分矯正で治したい」という相談は後を絶ちません。前歯専門のマウスピース矯正プランでは、費用が20万〜40万円程度、期間も3〜6ヶ月程度と提示されるため非常に魅力的に映ります。
しかし、「八重歯の部分矯正は、適応できるケースが極めて稀である」というのが歯科医学的な厳然たる事実です。八重歯は奥歯の噛み合わせのズレや全体のスペース不足が前方に押し出されて顕在化した結果に過ぎません。奥歯の位置を動かさずに前歯の数本だけを動かそうとすると、八重歯を並べるスペースが物理的に存在しないため、歯列全体を無理やり前に押し出すしかなくなり、出っ歯を誘発します。
無理な部分矯正によって上下の前歯が噛み合わなくなる「開咬(オープンバイト)」や、顎関節に過度な負担がかかる顎関節症を発症した結果、最終的に全体矯正をやり直すことになり、余計な費用と時間を費やすトラブルが多発しています。八重歯の治療を検討する際は、安易な部分矯正の広告に惑わされず、奥歯の咬合関係を含めた全顎的な診断を受けることが鉄則です。