「画面の向こう側にいる人の吐息や、木彫りの家具に触れたときの冷たさを感じてもらいたい」。そう語る言葉の端々には、長年シナリオ制作の最前線に立ち続けてきた職人の美学が宿る。CGの精度や処理能力がどれほど向上しようとも、核心にあるのはプレイヤーの感情を揺さぶる「動機」の設計だ。
プレイヤーに何を考えさせ、どんな躊躇を抱かせるのか。作中に配される人物群には、常に人間臭い歪みや割り切れない情念が埋め込まれている。登場人物がふとした瞬間につく嘘や、無言の沈黙に込められた情報量。そうしたディテールの積み重ねこそが、画面上の記号にすぎないキャラクターへ命を吹き込む魔法にほかならない。