花々の前でピタリと空中静止(ホバリング)する姿から「ハチドリ」と誤認される昆虫の代表格が、チョウ目スズメガ科に属するオオスカシバ(大透翅)とホウジャク(蜂雀)の仲間です。北米や中南米にのみ生息する鳥類のハチドリは、日本の自然界には生息していません。つまり、日本国内の屋外で見かける個体は100%これらの昆虫です。
特にSNS上で「エビフライみたいで可愛い」「緑色のモフモフした虫がいる」と毎年トレンド入りを果たすのがオオスカシバです。鮮やかなウグイス色の胴体に赤い帯を持ち、最大の特徴は羽が透明な虫である点です。羽化直後は翅(はね)に灰白色の鱗粉がついていますが、羽ばたいた瞬間に自ら振り落とし、完全な透明翅へと変化します。このガラス細工のような翅を毎秒70回以上という高速で羽ばたかせ、緑色のホバリングする虫として花から花へと飛び回ります。
一方、全体的にシックな茶褐色で、より蜂や小鳥に近い俊敏な飛び方を見せるのがホウジャク(ヒメクロホウジャクやホシホウジャクなど)です。漢字で「蜂雀」と書く通り、古くからハチとスズメ(小鳥)を掛け合わせたような存在として親しまれてきました。いずれも夜行性が多い蛾のグループの中で、太陽光が降り注ぐ日中に活動する珍しい生態を持っています。