日本政府の立場は一貫している。サンフランシスコ平和条約によって台湾に関する権利を放棄した以上、その帰属について独自に立場を表明する立場にはない、というものだ。
1972年の日中共同声明において、日本は中国政府の「台湾は中華人民共和国の不可分の領土である」という主張に対して「十分理解し、尊重する」との表現にとどめた。認める(recognize)ではなく、理解し尊重する(understand and respect)という言葉の精妙な使い分けは、まさに条約の空白を基礎にした外交的知恵だった。
しかし、台湾の有事が日本の有事と直結すると叫ばれる2026年現在、この巧妙な曖昧戦略がどこまで通用するかは不透明だ。国会でも条約の解釈をめぐる質疑が相次ぎ、外務省は従来の立場を崩さないものの、答弁の行間ににじむ緊張感は隠せない。