早朝の作業場に、かすかな水音とシャリシャリという独特の摩擦音が響き渡る。和三盆づくりにおいて最も心臓部と言えるのが「研ぎ(とぎ)」と呼ばれる工程だ。盆の上で煮詰めた黒糖に少量の水を加え、職人が素手で何度も捏ね上げ、揉み込んでいく。この作業を3日連続で行うことから「和三盆」の名がついたとされる説もあるほどだ。
「気温や湿度、その日の竹糖の出来具合で、水を含ませる量がミリ単位で変わる。機械に数値を読み込ませても、この微細な感触だけは再現できません」。香川県の老舗製糖所で作業にあたる職人は、白く染まった手を見つめながらそう語る。研ぎの後に「押舟(おしぶね)」と呼ばれる重石をかけた絞り機で蜜を抜く。蜜を抜き、再び研ぐ。この気の遠くなるような循環作業によって、独特の微細な粒子と上品な白さが生まれるのだ。