「ひとりぼっちロックバンドとして地球を侵略しにやってきた」――そんな荒唐無稽な設定を背負い、彼が表舞台に現れたのは数年前のことだ。いわゆるVTuberというフォーマットをまといながらも、そこに宿っていたのは紛れもない生々しいバンドマンの魂だった。素顔を決して晒さないスタイルは、単なるギミックではない。ビジュアルという先入観を徹底的に排除し、純粋にメロディとリリックだけで勝負するための覚悟そのものだ。
下積み時代、自宅の一室で黙々とトラックを組み、自らボーカルを吹き込んではネットの海へ放流し続けた日々。華やかなバーチャル空間の裏側にあったのは、驚くほど地道で孤独な作業の連続だった。幾多のクリエイターが時代の潮流に埋もれていくなか、彼は己の弱さや孤独をポジティブなエネルギーへ変換する独自の文法を磨き上げていった。