アンジェルマン症候群の最も象徴的な臨床所見は、「理由のない頻繁な笑い」「幸せそうな表情(Happy Demeanor)」、そして手をパタパタと動かす羽ばたき様運動です。一見すると常に機嫌が良いように見えますが、これは大脳皮質および小脳の神経伝達物質のアンバランスに起因する神経症状の一部であり、感情表現そのものとは医学的に区別して捉える必要があります。
発症頻度は約1万5,000人〜2万人に1人とされ、日本では指定難病201号に位置づけられています。生後6か月頃までは一般的な乳児と大きな差が見られないことも多く、おすわりの遅れ、筋緊張の低下、微細な震え(振戦)などを契機に精密検査を受け、1歳から3歳前後に遺伝子検査を経て確定診断に至るのが一般的な診断の経緯です。
よく混同されやすい疾患として「ダウン症候群(21トリソミー)」が挙げられますが、遺伝学的機序および臨床像は大きく異なります。ダウン症候群が21番染色体の数的異常(過剰)であるのに対し、アンジェルマン症候群は15番染色体長腕(15q11.2-q13)に存在する母性由来の「UBE3A遺伝子」の機能喪失によって引き起こされます。