『君の膵臓をたべたい』において、最大のプロットツイストにして物語の根幹を揺るがす事実が、山内桜良の死因は膵臓の病気ではなく通り魔事件による刺殺という点です。物語の前半から中盤にかけて、桜良は余命約1年であることを主人公の「僕」(志賀春樹)だけに打ち明け、秘密の日記「共病文庫」を通じて心を通わせていきます。
読者の多くは「病状が悪化し、病院のベッドで静かに最後を看取る」という王道の闘病ストーリーを予想していました。しかし、入院生活を終えて退院した当日、春樹と待ち合わせていたカフェへ向かう道中、桜良は突如として通り魔に胸を刺され、そのまま病院へ搬送されて帰らぬ人となります。
春樹は待ち合わせ場所で何時間も待ち続け、スマートフォンに届かないメッセージを送り続けます。そして帰宅後、夜のニュース速報で「市内の路地で女子高校生が刺殺された」という凄惨な事実を知るのです。闘病による緩やかな別れの予感は、一瞬の凶行によって暴力的に断ち切られました。