なぜ山で命を落とすのか?急増するトレラン遭難の実態と生還の分水嶺

なぜ山で命を落とすのか?急増するトレラン遭難の実態と生還の分水嶺

なぜ山で命を落とすのか?急増するトレラン遭難の実態と生還の分水嶺の重要なポイントについて、最新情報を詳しくお届けします。

遭難者の行動心理を分析すると、人間が危機的状況で陥りやすい認知の歪みが事故の引き金になっていることが浮き彫りになります。

第一に働くのが「正常性バイアス」です。「自分はフルマラソンを3時間台で走れる」「あと少し進めば知っている道に出るはずだ」という過信が、引き返す勇気(エスケープ判断)を奪います。登山界には「迷ったら尾根へ登り返せ」という鉄則がありますが、疲弊したランナーの心理は「登り返す労力を避けたい」という本能に負け、危険な下りを選択してしまいます。

第二に、ランニング特有の「エンドルフィン分泌(ランナーズハイ)」による疲労感の麻痺です。自覚症状がないまま筋肉のグリコーゲンが枯渇(ハンガーノック)し、急激なペースダウンとともに深部体温が低下。気付いたときには手足の震えが止まらず、自力歩行が不可能な状態へと一気に転落します。現場をよく知る山岳ガイドらは、「走れる体力があることと、山で生き延びる知恵があることは全くの別物である」と警鐘を鳴らしています。

阿部 裕樹
著者

阿部 裕樹

マネー知識やキャリア形成に役立つノウハウを、初心者にも分かりやすく解説するのが得意です。