SNSやネット掲示板を観察すると、「西郷隆盛は子どもに一銭も残すなと言った」「親は財産をすべて使い切って死ぬべきだ」という極端な言説が散見されます。しかし、歴史の事実と原典の文脈を照らし合わせると、これは明らかな曲解です。
西郷が否定したのは「美田」であって、「教育や生活基盤の支援」ではありません。当時における美田とは、自ら耕作しなくても小作料が転がり込んでくる不労所得の源泉を指していました。働かずに贅沢ができる環境を先回りして整えてしまうことが、人間の品性と闘志を腐らせると喝破したのです。
西郷家自身も生活に困窮するほどの極貧に喘いだ時期があり、家族を路頭に迷わせることを美徳としたわけではありません。真の意図は「生きる術を身につけさせよ」という点にあります。資産管理のプロや歴史研究者の間でも、単なる清貧の強要や育児放棄(経済的ネグレクト)の言い訳としてこの言葉を使うことは、西郷の哲学に対する冒涜であると指摘されています。