海の森公園が位置する「中央防波堤内側埋立地」の歴史は、高度経済成長期の東京が直面した深刻なゴミ問題と切り離せません。1970年代、東京都内では急速な消費拡大に伴いゴミの排出量が激増し、いわゆる「ゴミ戦争」が勃発しました。この廃棄物の最終処分場として1973(昭和48)年から1987(昭和62)年にかけて埋め立てられたのが、まさにこの地です。
搬入された廃棄物の総量は約1,230万トンに達します。当時の埋め立て技術は、ゴミ層と建設発生土を交互に積み重ねる「サンドイッチ工法」が採用されました。悪臭や害虫の発生を防ぐ目的で土をかぶせたものの、土壌環境は極めて過酷であり、植物が自然繁茂するような環境とは程遠い不毛の島でした。
転機が訪れたのは2000年代初頭です。世界的建築家である安藤忠雄氏の呼びかけを契機に、都民や企業が一体となって苗木を植え、緑あふれる美しい森へと再生させる「海の森プロジェクト」が始動しました。国内外からの募金や協賛が集まり、都民ボランティアの手によって植えられた苗木は累計で約48万本に達します。
堆肥には都内の公園や街路樹の剪定枝葉から作られたリサイクルチップが使われ、土壌改良が徹底して行われました。かつて首都の廃棄物を受け止め続けた「ゴミの島」は、半世紀の時を経て、東京湾の海風を受け止め都心へ涼風を送り込む「風の道」としての生態系拠点へと劇的な変貌を遂げたのです。