インターネット上の掲示板やSNSでは、公開初期から「くんちゃんの声が大人っぽくて違和感がある」「4歳の男の子には聞こえない」といった意見が散見されました。こうした評価の背景には、日本のアニメ視聴環境における特定の期待値とのギャップが存在します。
深夜アニメや長寿ファミリーアニメで広く親しまれている「女性声優が演じる可愛らしく記号化されたショタボイス(少年の声)」に耳が慣れている視聴者にとって、上白石萌歌が演じるくんちゃんの声は、喉を締め上げずに地声で泣き叫び、息を切らすリアルな幼児そのものでした。アニメ的なデフォルメを意図的に排除した結果、一部の層には「下手に聞こえる」「耳に刺さる」という違和感として受容された側面があります。
音響監督や演出陣が目指したのは、完璧に整えられた美声ではなく、感情がコントロールできずに癇癪(かんしゃく)を起こす4歳児のリアルな生理現象です。海外の映画祭や批評家筋(米アカデミー賞ノミネートやアニー賞受賞)において「子どもの心理的リアリズムを完璧に捉えた音響表現」と極めて高く評価された事実は、本作の演出方針が国際的な映画表現として結実していたことを証明しています。