黒田博樹氏が「男気」と称賛される決定打となったのは、2014年シーズン終了後の去就選択でした。当時、MLBの超名門ニューヨーク・ヤンキースで3年連続2桁勝利を記録し、メジャー全体でもトップクラスの先発投手として君臨していた黒田氏に対し、メジャー球団が提示した条件は単年約20億円(約1600万〜1800万ドル規模)という破格の大型契約でした。
トップローテーション投手としての地位と莫大な富が約束されていたにもかかわらず、黒田氏が選んだのは年俸4億円プラス出来高という、条件面では5分の1にも満たない古巣・広島東洋カープへの復帰でした。資本主義のプロスポーツビジネスにおいて、常識を完全に覆すこの決断に、日本国内のみならずアメリカの主要メディアも「金よりも情熱と忠誠を選んだ侍」と驚愕の念を報じました。
復帰を決断した最大の理由は、「まだ投げられる元気なうちにカープに戻り、ファンの前で優勝したい」という強い使命感でした。全盛期を過ぎてから戻るのではなく、メジャーの第一線で戦えるトップフォームの状態で恩返しを果たすことこそが、黒田氏が貫いたプロフェッショナルとしての誇りでした。