ネット上の掲示板やコミュニティにおいて、戦刃むくろは時に「妹の言いなりになって虐殺を繰り返した冷血な狂信者」と一面的に評されることがあります。しかし、作中の緻密な心理描写を丹念に追っていくと、その評価には重大な誤解が含まれていることが分かります。
まず、彼女が絶望を求めた根本的な動機は、妹である江ノ島盾子への「理解と承認」にありました。天賦の才能ゆえに世界のすべてに退屈し、絶望にしか快楽を見出せない妹に対し、戦刃は「妹が望む世界を共に創り上げることだけが姉としての存在証明」だと刷り込まれていたのです。心理学的に言えば、彼女の精神構造は自らの意志を喪失した人形ではなく、極度の支配・被支配関係下における防衛規制が働いた結果でした。
さらに、アニメ『ダンガンロンパ3 絶望編』のBlu-rayブックレットや開発者対談でも明かされている通り、彼女は苗木誠と接する中で「絶望以外の生き方」に何度も揺らいでいました。冷酷な殺人機械として完成されていたわけではなく、年相応の少女らしい情緒を確実に宿していたからこそ、妹の裏切りによって散っていった悲劇性が一層際立つのです。