ネット上の言説で頻繁に見られるのが、「日本の法律が厳しすぎて、レストランの持ち帰りを一律で禁止している」という誤解です。しかし、これは明確な誤りです。
日本の現行法において、飲食店からの食べ残しの持ち帰りを一律に禁止する法律条文は存在しません。禁止しているように見えるのは、保健所の行政指導のガイドラインや、自治体ごとの衛生指導要綱を反映して店舗が自主規制を行っているためです。
政府も手をこまねいているわけではありません。年間約500万トン近くにのぼる食品ロス削減の取り組みを加速させるため、環境省、厚生労働省、農林水産省、消費者庁の関連4省庁は合同で「飲食店等における食べ残し持ち帰り(ドギーバッグ等)に関するガイドライン」を整備しています。
このガイドラインで示された重要な転換点は、「客の自己責任の明確化」です。指針では、店側が持ち帰り時の注意点(早めに食べること、再加熱すること、涼しい場所で保管すること)を口頭や書面で説明し、客側が自らの意思と責任で料理を詰める形式をとる場合、衛生管理上の責任主体を客側に移行させることが可能である旨が示されています。
ドギーバッグ普及委員会などの市民団体も長年訴え続けてきたように、店舗側の過度なリスク負担を軽減するため、誓約書にサインを求めるデジタル署名システムや、注意書きが印字された専用持ち帰りバッグを導入する先進的なレストランも増え始めています。「店側の責任」から「個人の自己決定と自己責任」への意識改革こそが、制度の壁を越える鍵となっています。