クエとアラをめぐる混乱には、さらにもう一つの魚名が絡んでいます。それが伊豆諸島や東海地方の磯釣りファンの間で語られる「モロコ」です。
琵琶湖の固有種である淡水魚の「ホンモロコ」とは全く無関係に、釣りの世界では体長1メートルを超える大型のクエやマハタを総称して『モロコ』と呼ぶ地域習慣が存在します。つまり、「博多のアラ」「伊豆のモロコ」「和歌山・長崎のクエ」は、地域呼称は三者三様でありながら、実態としては同一の魚種(クエ)を指しているという多重構造が存在するのです。
また、ネット上では「養殖クエは天然に劣る」という言説が散見されますが、近畿大学をはじめとする完全養殖技術の進化により、脂の乗りが安定した養殖クエは高級料亭でも高く評価される品質に達しています。天然物の野趣あふれる旨味と、養殖物の計算された脂乗りの良さ、それぞれの持ち味を正しく理解することが重要です。
【プロの結論】おすすめできる人・慎重になるべき人の判断基準
双方の特性を踏まえた上で、どのようなシーンでどちらを選ぶべきかの明確な基準を提示します。
【クエ(博多のアラ)を選ぶべき人】
・冬場に濃厚でコク深い極上の鍋料理を堪能したい人
・コラーゲンやゼラチン質を豊富に含んだプルプルの食感を好む人
・大相撲九州場所の伝統に代表される、豪快な冬の郷土食文化を体験したい人
【標準和名アラ(本アラ)を選ぶべき人】
・刺身や薄造り、塩焼きで、雑味のない洗練された白身の甘みを味わいたい人
・クエ以上の圧倒的な水揚げの少なさを誇る「真の希少魚」に出会いたい人
・脂のしつこさが苦手で、どこまでも上品な後味を重視する人