新川さくら並木がこれほどまでに人々を惹きつける最大の要因は、「江戸情緒の復元」をコンセプトに綿密に設計された景観美と、運河が持つ歴史の重みにあります。
新川の歴史は江戸時代初期、徳川家康の命によって開削されたことに始まります。行徳の塩を江戸市中へ運ぶ重要な水路「塩の道」として物資輸送や人々の往来を支え、昭和初期まで活気ある水運の要所として機能していました。時代の変遷とともに水運の役目を終えた後、江戸川区による「新川千本桜計画」が始動。2007年から整備が進められ、全長約3キロメートルの両岸に約718本・全20種類以上の桜が植樹されました。
現地を歩くと実感するのは、電柱の地中化や、江戸の町並みを再現した木組みの橋、火の見櫓(ひのみやぐら)、石畳の遊歩道といった徹底した景観デザインです。単に桜が並んでいるだけでなく、「江戸の運河風景×桜」という唯一無二の物語性が空間全体に息づいているからこそ、来訪者は日常を離れた没入感を味わうことができます。