三浦半島西岸の秋谷海岸に位置する立石は、波の浸食によって柔らかい地層が削られ、硬い火成岩質の巨岩だけが削り残されて形成された自然の造形美です。古くから風光明媚な地として知られ、江戸時代の浮世絵師・歌川広重(安藤広重)が名作『相州三浦秋屋の里』において、海上にそびえる立石と富士山、そして当時の漁村風景を詩情豊かに描き出しました。
広重が描いた構図とほぼ同じアングルが、令和の現在でもほとんど変わらぬ姿で立石公園から展望できる点は、日本国内でも極めて貴重な文化的景観といえます。昭和52年(1977年)に神奈川県が選定した「かながわの景勝50選」において「秋谷の立石」として堂々の選出を果たして以来、半世紀近くにわたり神奈川を代表する海岸美のシンボルとして愛され続けています。
海岸線に突き出た岩場「梵天の鼻」と、そこに根を張る松の枝ぶり、そして背後に広がる相模湾と富士のシルエット。自然の厳しさと静寂が同居するこの風景は、晴天の日だけでなく、雲が茜色に染まる夕刻や荒波が打ち寄せる干潮時など、刻一刻と表情を変える点に尽きない魅力があります。