天文学界を決定的な転換へと導いたのが、チェコのプラハで開催された2006年8月24日の第26回国際天文学連合(IAU)総会でした。世界中から集まった天文学者たちの間で連日深夜まで怒号が飛び交う激論の末、人類史上初めて「惑星とは何か」を明確にする厳格な定義が多数決で可決されました。採択された基準は以下の3点です。
【IAUが定めた惑星の3条件】
- 太陽の周りを公転していること
- 十分な質量を持ち、自己重力によってほぼ球形を保っていること(静水圧平衡)
- その軌道周辺から、他の天体を一掃していること(公転軌道上を支配していること)
冥王星はこのうち、第1条件と第2条件を難なくクリアしていました。太陽を約248年かけて周回しており、丸い形を維持するだけの質量も備えています。ところが、致命傷となったのが第3条件の「軌道の周辺から他の天体を排除していること」でした。
地球や木星といった惑星は、圧倒的な自身の重力によって、自らの公転軌道上にある小天体を衛星として取り込むか、あるいは外側へ弾き飛ばして軌道上を独占しています。一方の冥王星は、軌道周辺に自分と同規模の氷天体が密集するカイパーベルトの中に埋もれており、自らの軌道を支配できていませんでした。さらに、最大の衛星である「カロン」の質量が冥王星の約1割強にも達するため、両者の共通重心が冥王星の本体の外側に存在するという、惑星としては極めて特殊な「二重天体」のような構造を持っていたのです。
第3条件を満たせなかった冥王星は、惑星の座を降りることとなり、同時に新設された「準惑星(dwarf planet)」という新たなカテゴリーの代表格として再スタートを切ることになりました。