獣医師免許を取得するための法的な正規ルートは、獣医師法によって厳格に規定されています。短大や専門学校、通信教育などを経て受験資格を得る方法は一切ありません。高校卒業後、文部科学省が指定する獣医学課程を設置した大学に入学し、獣医師の修業年限である6年制の専門教育を履修した上で、農林水産省が年に1回実施する「獣医師国家試験」に合格することが絶対条件です。
大学のカリキュラムは、1〜2年次に基礎生命科学や解剖学、生理学を叩き込まれ、学年が上がるにつれて病理学、薬理学、微生物学、そして内科・外科などの臨床獣医学へと進みます。さらに高学年では附属の動物病院や牧場での臨床実習、卒業論文の研究に追われるため、一般的な4年制学部の学生のような余暇を過ごす余裕はほとんどありません。
最終関門となる獣医師国家試験の合格率は、例年80%〜85%前後で推移しています。一見すると高水準に見えますが、この数字を額面通りに受け取るのは危険です。受験者の大半は、難関の大学入試を突破し、6年間の過酷な進級試験や卒業試験をクリアしてきた選抜組だからです。大学側も国家試験の合格実績を維持するため、合格の見込みが薄い学生を卒業試験で厳格に留年させるケースが珍しくありません。実質的な脱落者を考慮すると、試験対策のプレッシャーは想像以上に重いのが現場の実情です。
なお、一度大学を卒業した社会人や他学部生から目指すルートについても検証が必要です。結論から言えば、社会人から獣医師になるには、学士編入制度を実施している大学がごく一部(数大学で若干名募集)にとどまるため、一般入試を受け直して大学1年生から再スタートを切るのが現実的な王道となっています。20代後半から30代で合格を勝ち取る再受験生も一定数存在しますが、6年間の学費と無収入期間に耐えうる資金計画が不可欠となります。