バイヤーやコレクターの間で長年議論が交わされてきたのが、「シングルステッチはいつまで存在したのか」という移行期の境界線問題です。
結論から述べると、アパレル産業全体でシングルステッチからダブルステッチへの全面移行が完了したのは1995年から1997年頃です。もちろん、ある日突然すべての工場が切り替わったわけではありません。主要なボディメーカーごとに移行スピードは異なっていました。
例えば、ヴィンテージ市場で最も頻繁に目にするHanes(ヘインズ)の「BEEFY-T」は、1993年頃から段階的にダブルステッチの導入が進み、1995年には大半がダブルへと移行しました。一方でFruit of the Loom(フルーツオブザルーム)やOneita(オニータ)、Anvil(アンビル)といったメーカーでは、在庫の余剰パーツや工場の機械更新タイミングのズレにより、1996〜1997年頃までシングルステッチのボディが出荷されていた記録が確認されています。
この過渡期に生まれたのが、「袖はシングルステッチなのに、裾はダブルステッチ」あるいはその逆という混在仕様です。これは、工場のライン上で袖付けの機械だけが先行して新型の2本針ミシンに更新されたことや、旧仕様でストックされていた袖パーツを新仕様の身頃に縫い合わせたことで生じた、産業移行期ならではの過渡期ディテールです。
したがって、「袖がダブルだから100%年代が新しい」と即断するのは早計です。プリントのコピーライト(著作権表記の年号)が「1995」や「1996」であっても、袖シングル×裾ダブルの仕様であれば、当時製造された本物のオリジナルである確率が極めて高いといえます。