実際に山川の教科書を手に取って学び直しの現場に飛び込んだ人々は、どのような手応えを感じ、どのような壁にぶつかっているのでしょうか。編集部が学習者のリアルな手記やSNS上の学習記録コミュニティ、知恵袋の相談事例を追究すると、賞賛と同時にリアルな苦悶の声が浮かび上がってきます。
都内のIT企業で事業開発を担当する40代男性は、自身のブログで次のように告白しています。「最初はYouTubeの歴史系チャンネルを見て満足していたが、枝葉のトピックばかりで全体の骨格が掴めなかった。そこで高校以来となる山川の教科書を開いたところ、無駄のない引き締まった文体で因果関係が繋がっていく感覚に鳥肌が立った。1ページあたりの情報密度が尋常ではなく、ビジネスの事業戦略を立案する際の大局観を養う上でも最高の教材になっている」
一方で、手放しの絶賛ばかりではありません。都内大手予備校の教壇に立つ日本史科講師は、学習相談の現場で見られる受講生の躓きを次のように指摘します。「山川の『詳説日本史』は、全教科書の中で最も完成された名著ですが、同時に最も文章の抽象度が高いテキストでもあります。一文の中に複数の歴史的事実と論理的帰結がギュッと圧縮されているため、初学者がいきなり通読しようとすると、30ページ進んだあたりで『用語は知っているが何が起きているのか頭に入らない』という読解の息切れを起こすケースが後を絶ちません」
ネット上のコミュニティでも、「ページをめくる速度が上がらない」「登場人物の動機が見えにくく、途中で眠くなる」といった挫折体験談が散見されます。このギャップが生じる根本原因は、山川日本史教科書の難易度と大学受験において最難関私立大学や国公立二次試験の論述対策まで耐えうるよう、極限まで語句を精選し、感情を交えない客観的文体で貫かれている点にあります。この「無味乾燥に見えるほどの研ぎ澄まされた密度」を乗りこなせるかどうかが、独学の成否を分ける分水嶺となっています。