酸化還元滴定の計算問題を解く際、長大な化学反応式を毎回作るのは時間の浪費です。あらゆる計算は、次の「黄金律(根本原理)」ひとつで瞬時に解き明かすことができます。
酸化剤が受け取った電子の総物質量(mol) = 還元剤が放出した電子の総物質量(mol)(酸化剤の mol × 1分子が奪う e⁻ 数) = (還元剤の mol × 1分子が放つ e⁻ 数)
頻出実践例題:市販オキシドールの濃度決定
【問題】
市販の過酸化水素水(オキシドール)10.0 mLをメスフラスコに入れ、純水を加えて正確に100 mLに薄めた。この希釈溶液からホールピペットで10.0 mLをコニカルビーカーに分取し、希硫酸を加えて酸性にした。これを0.0200 mol/Lの過マンガン酸カリウム水溶液で滴定したところ、終点までに12.50 mLを要した。薄める前の過酸化水素水のモル濃度(mol/L)を求めよ。
ステップ解説
① 希釈後の過酸化水素水の濃度を c [mol/L] と置く
コニカルビーカー内のH₂O₂の物質量は、c × (10.0 / 1000) mol です。
H₂O₂は1分子あたり2個の電子を放出します。
② 滴下したKMnO₄の電子物質量を計算
消費されたKMnO₄の物質量は、0.0200 × (12.50 / 1000) mol です。
KMnO₄は酸性環境で1分子あたり5個の電子を受け取ります。
③ 等式(電子保存則)を立てる
0.0200 mol/L × (12.50 / 1000) L × 5 = c [mol/L] × (10.0 / 1000) L × 2
両辺の1000を払い、計算を進めます。
0.0200 × 12.50 × 5 = c × 20.0
1.25 = 20.0 c
c = 1.25 / 20.0 = 0.0625 mol/L(希釈後の濃度)
④ 希釈倍率を掛けて元の濃度を算出
元のオキシドールは10.0 mLを100 mLへと「10倍」に薄められていました。
したがって、求める元の濃度は:
0.0625 mol/L × 10 = 0.625 mol/L
このように、半反応式から「奪う電子数(5)」と「放つ電子数(2)」を把握していれば、複雑な係数比に悩まされることなく、1本の美しい方程式で確実に正解を導き出すことができます。