市販薬でセルフケアを行う上で、絶対に混同してはならない重大な盲点が存在します。それが「屋内ダニ(ツメダニ・イエダニ)」と「屋外のマダニ」の明確な識別です。
マダニは森林、草むら、河川敷、農地などに生息する大型のダニ(吸血前で約2〜3mm、吸血後は小豆大〜1cm以上に巨大化)です。草むらに入った後に皮膚に黒いイボのようなものが付着している場合、それは刺された痕ではなく、現在進行形でマダニが頭部(口器)を皮膚の深くに突き刺して吸血している状態です。
ここで絶対にやってはならないのが、「無理に指やピンセットで引き抜くこと」や「市販の虫刺され薬を塗って放置すること」です。無理に引っ張るとマダニの胴体だけが千切れ、口器が皮膚組織内に残留して激しい異物肉芽腫を引き起こします。さらに深刻なのは、マダニが媒介する致死的な感染症のリスクです。
マダニ刺され症状と受診の目安として最も警戒すべきは、日本国内でも死亡例が多数報告されている「重症熱性血小板減少症候群(SFTS)」や「日本紅斑熱」「ライム病」です。マダニに刺されてから6日〜2週間の潜伏期間を経て、38度以上の発熱、激しい倦怠感、消化器症状(嘔吐・下痢)、全身の発疹などが出現します。SFTSは致死率が10〜30%に達する極めて危険な感染症であり、市販の外用薬で防ぐことは一切不可能です。吸血中のマダニを発見した場合、あるいは野外活動後に刺咬痕を発見した場合は、一切触らずに直ちに皮膚科または外科を受診してください。