感染症対策の代名詞となったアルコール(エタノール)消毒ですが、すべての病原体に万能というわけではありません。消毒効果の成否を分けるのは、ウイルスが外側に「脂質の膜(エンベロープ)」をまとっているかどうかです。
アルコール消毒の効果が絶大なのは、エンベロープを持つ「エンベロープウイルス」です。インフルエンザウイルスやコロナウイルス、ヘルペスウイルスなどがこれに該当します。アルコールは脂質を瞬時に溶かす性質があるため、外膜が破壊されたウイルスは宿主細胞に結合する能力を失い、容易に感染力を失います。一般的な細菌に対しても、アルコールは細胞膜を変性させて高い殺菌力を発揮します。
注意が必要なのは、膜を持たない「ノンエンベロープウイルス」です。代表格であるノロウイルスやロタウイルス、アデノウイルスなどは、強固なタンパク質の殻で守られているため、通常のアルコール消毒液を吹きかけただけでは不活化しにくい性質を持ちます。
ノンエンベロープウイルスによる感染リスクを断ち切るには、次亜塩素酸ナトリウム(塩素系漂白剤の希釈液)を用いた消毒が有効です。そして何より、物理的に病原体を洗い流す「石けんと流水による30秒以上の手洗い」が、菌・ウイルスの種類を問わない最強の基礎防衛策となります。