一般的な蚊やダニ(イエダニ・ツメダニなど)による虫刺されと、野外に生息するマダニによる吸血痕には決定的な構造上の違いが存在する。最大の識別ポイントは、「虫体そのものが皮膚に突き刺さったまま固定されているか否か」だ。
マダニは皮膚に口器(鋸歯状の口)を深く突きたて、セメント状の物質を分泌して自らを強力に固定する。そのため、症例写真で確認できる初期の様子は、まるで皮膚の上に「黒褐色〜赤褐色の小さなイボやホクロが生えた」かのように見える。刺されてから数日から数週間かけて血を吸い続けるため、米粒大だった体長は徐々に膨れ上がり、最終的には数ミリから1センチ以上の丸い小豆状にまで肥大化するのだ。
一方で、ブヨやアブ、蚊による刺し傷は、刺された直後から強い痒みや鋭い痛みが走り、中心部に小さな点状の出血痕が残るにとどまる。マダニの場合は吸血時に鎮痛・抗凝固物質を含んだ唾液を注入するため、刺された瞬間には「全く痛みがなく気づかない」という特異な性質を持つ。肌に引っかかりを感じて初めて画像と見比べ、パニックに陥る人が後を絶たないのはこのためだ。