原の政治活動を知る上で最高峰の史料とされるのが、彼自身が克明に書き残した『原敬日記』だ。国立国会図書館に保管されているこの日記の直筆原稿や関連文書には、表のニュースでは報道されなかった政界の生々しい密約、藩閥の重鎮・山県有朋との死闘、そして日々の政務に追われるなかでの深い孤立感が容赦ない筆致で綴られている。
近年、NHKなどのドキュメンタリー番組でも特集されたこの日記のデジタル解析プロジェクトでは、原が最期の日々に見せていた予兆のような心理状態が浮き彫りにされた。テロの恐怖や政治的妥協の限界を感じつつも、政党政治の芽を摘ませまいと孤軍奮闘していた姿だ。日記の一行一行からは、単なる権力者の顔ではなく、歴史の奔流に立ち向かい続けた一人の人間の苦闘と覚悟が伝わってくる。