10代前半で銀幕デビューを果たした彼女が、真の一流女優として覚醒した契機は巨匠・溝口健二との出会いでした。1936年に公開された『祇園の姉妹』で見せた、打算的でありながらどこか切なさを抱えるモダンガールの芸妓・おまつの演じぶりは、当時の映画界に激震を与えます。
戦前の日本映画における女性像といえば、耐え忍ぶしおらしさが美徳とされていました。しかし、溝口の容赦ない演技指導のもと、彼女は男たちを冷徹にあしらうエゴイストを徹底的なリアリズムで体現。感情を露わにする激しいセリフまわしと繊細な表情の変化は、日本映画史に新しい風を吹き込んだ瞬間にほかなりません。