なぜ「上」の1画目は縦画になったのか。その理由は、約3300年前の甲骨文字や金文にまで遡る漢字の成り立ち(指事文字)に隠されています。
漢字の成り立ちにおいて、「上」と「下」は具体的な物の形を模した「象形文字」ではなく、抽象的な位置関係を記号で表した「指事文字(しじもじ)」です。
古代の甲骨文字における「上」は、1本の長い基準線(横線)を引き、その「上方」に短い線や点を1つ置くことで「うえ」という空間概念を表現していました。当時としては基準線が主たる土台であり、その上に印をつける構造でした。
しかし、文字が篆書(てんしょ)から隷書(れいしょ)、そして楷書(かいしょ)へと進化する過程で、縦の支柱が文字の骨格として強調されるようになりました。昭和33年(1958年)に当時の文部省が編纂した『筆順指導の手引き』においても、「原則として上から下へ、左から右へ」「中心となる縦画を先に書く」という運筆の自然な流れが体系化され、現代の「縦画が1画目」という標準規範が確立されたのです。