原点である『Fate/stay night』は、聖杯戦争という過酷で重厚なストーリーが展開するダークファンタジーの傑作だ。流血と陰謀が渦巻く惨劇の只中で、主人公の頭頂部に揺れる愛らしい毛髪は、視聴者やプレイヤーに束の間の安らぎを与える絶妙な「癒やし」として機能していた。
だが、その平和的な象徴が、劇中で黒化し絶望的な敵として立ちはだかる場面では一変する。映画『劇場版 Fate/stay night [Heaven's Feel]』において描かれた暗黒化の恐怖は、かつて親しまれた愛らしいアイコンが失われたことの悲劇性をより一層引き立てた。シリアスとユーモア、光と影を一枚の紙裏のように表裏一体で表現するストーリーテリングの巧みさがここにある。