白く透き通るような美しい麺線と、喉を滑り落ちる清涼な喉越し――。「更科京屋」を語る上で欠かせないのが、蕎麦の原点ともいえる更科蕎麦の洗練された技術です。江戸時代から受け継がれる蕎麦の系譜において、藪や砂場と並び称される更科は、大名屋敷や宮家にも愛顧された歴史を持ちます。蕎麦の実の中心部にある胚乳(一番粉、御膳粉)のみを贅沢に挽き出して打つ更科蕎麦の特徴と歴史は、雑味が一切ない上品な甘みと弾力に宿っています。
更科京屋が長年地域で支持を集め続ける最大の要因は、この歴史ある技法を妥協なく継承しつつ、現代の日本人の味覚に寄り添った出汁作りを極めている点にあります。老舗でありながら敷居の高さを感じさせず、日常の延長線上で至高の一杯を供する姿勢が、親子三代にわたる熱烈な常連客を繋ぎ止めています。「蕎麦は庶民の粋な日常食である」という初代からの哲学が、暖簾の端々に息づいています。