現地を訪れた際、イングランド以外の地域で住民に「Are you English?(あなたはイングランド人ですか?)」と尋ねる行為は重大なマナー違反とみなされます。公式統計や世論調査(英国国家統計局・各種調査機関データ)においても、自らの帰属意識として「British(英国人)」よりも「Scottish(スコットランド人)」「Welsh(ウェールズ人)」を最優先に回答する割合が過半数を占める地域が少なくありません。
現地メディアの報道やSNS上のコミュニティ分析では、特にスポーツの国際大会における「イングランド嫌い」の感情が可視化されています。「A.B.E.(Anyone But England / イングランド以外のチームならどこでも応援する)」という言葉がスコットランドやウェールズのパブで日常的に交わされる事実は、何百年経っても消えない複雑な対抗意識を物語っています。
この地域的アイデンティティが最も先鋭化したのがスコットランド独立問題です。2014年の住民投票では反対55.3%対賛成44.7%で否決されたものの、情勢を一変させたのが2016年のブレグジット(英国のEU離脱)でした。英国全体では離脱が51.9%で過半数となった一方、スコットランド域内では62.0%の住民がEU「残留」に投票していたのです。
「イングランド住民の意志によって、意に反してEUから引きずり出された」という不満はスコットランド民族党(SNP)の原動力となり、再度の住民投票(Indyref2)を求める動きが長年継続しました。2026年代半ば以降、SNP内部のスキャンダルや政局変動により独立の機運は一時的な踊り場を迎えているものの、若年層を中心とする「親EU・自治権拡大」への要求は根強く、連合王国の枠組みは依然として緊張感を内包しています。