路地の持つ独特の質感は、国内外の映画関係者を長年狂わせてきた。その代表格がハリウッドの巨匠マイケル・マンだ。彼が手がけた大作ドラマシリーズ『TOKYO VICE』(HBO Max共同制作)では、煌びやかな歌舞伎町の一角から一歩外れた、濡れたタイルの路地や暗がりが執拗なまでに美しく切り取られた。
レンズが捉えたのは、闇の中に浮かび上がる青と赤のネオンサイン、そして雨上がりの水たまりに反射する街灯の影。これぞまさに現代のネオ・ノワールと呼ぶべき圧倒的な映像美だ。整然としたスタジオセットでは決して再現できない、何十年もの人間の営みが染みついた壁の質感や電線の複雑な交差が、サスペンスの緊張感を極限まで高めている。