四国一周は「海沿いを平坦に走るだけのルート」と錯覚されがちですが、実態は過酷な山岳ステージを含むハードなロングライドです。コース全体の累積獲得標高は約8,000m〜10,000mに達し、これは富士山を海抜ゼロメートルから2回半以上登り直す計算に匹敵します。
特に難所となるのが、高知県から愛媛県へ抜ける県境の峠越えや、リアス式海岸特有の細かなアップダウンが連続する宇和海沿いの区間です。平地巡航のペース感覚で走っていると、度重なる登坂で脚力を削られ、午後には極度の疲労に襲われることになります。
初心者が最も警戒すべきは「補給ポイントの空白地帯」です。高知県東部の室戸岬周辺や西部の足摺岬周辺などは、数十キロメートルにわたってコンビニや飲食店が存在しない区間が珍しくありません。自販機すら見当たらない山間部もあり、「次の街で食べよう」と補給を先送りにした結果、深刻なハンガーノック(エネルギー切れ)に陥る事例が後を絶ちません。
また、幹線道路における狭小トンネルの連続も大きなリスク要因です。四国の沿岸部や山間部には、歩道がなく路肩が極めて狭いトンネルが多数残っています。後方から迫る大型トラックの轟音と風圧は強い恐怖を伴います。視認性を確保する高光量ライトの装備はもちろん、無理な走行を避け、歩行者用通路がある場合は確実にそちらへ退避する判断力が求められます。