量子トンネル効果の仕組みとは?すり抜けの原理と半導体限界を徹底解明

量子トンネル効果の仕組みとは?すり抜けの原理と半導体限界を徹底解明

量子トンネル効果の仕組みとは?すり抜けの原理と半導体限界を徹底解明について知っておくべき 理由を分かりやすい構成で解説いたします。

長年にわたり半導体産業を牽引してきた「ムーアの法則(集積度が約2年で2倍になる経験則)」ですが、現場の半導体エンジニアたちが最も頭を抱えているのが、皮肉にもこの量子トンネル効果です。

半導体の基本素子であるトランジスタは、電流を流す「ON」と止める「OFF」を切り替えるスイッチの役割を果たしています。素子を小さくすればするほど、処理速度は向上し消費電力は下がるとされてきました。しかし、回路幅やゲート長が原子数個分(数ナノメートル以下)に到達したことで、半導体微細化の限界が現実のものとなっています。

トランジスタのスイッチを「OFF」にして電子の通路を遮断しているつもりでも、絶縁膜やチャネルの障壁が薄すぎるため、電子が量子トンネル効果によって障壁を勝手にすり抜けてしまいます。これが「リーク電流(漏れ電流)」です。リーク電流が発生すると、チップが何も処理を行っていない待機状態であっても電力を激しく消費し、猛烈な熱を発します。回路を小さくした結果、かえってバッテリーの減りが早まり、熱暴走のリスクが高まるという逆転現象が生じるのです。

TSMC、Intel、Samsung、日本のRapidus(ラピダス)といった世界トップのファウンドリでは、この物理限界を突破するために多大な研究開発費を投じています。従来の平面構造から立体的な全周ゲート構造である「GAA(Gate-All-Around)」構造への刷新、裏面給電技術の採用、さらには二硫化モリブデンなどの二次元新素材の探索が進められています。量子トンネル効果を物理的に封じ込めるためのナノスケールの攻防が、製造の最前線で日夜繰り広げられています。

また、この制御技術は量子コンピュータの最新動向とも密接に結びついています。超伝導方式の量子プロセッサでは、2つの超伝導体に挟まれた極薄の絶縁膜を電子対がすり抜ける「ジョセフソン効果(巨視的量子トンネル現象)」を量子ビットの心臓部に採用しています。さらに、膨大な組み合わせの中から最適解を探す量子アニーリングマシンでも、ポテンシャルの山をトンネル効果で飛び越えて最短で最適解(エネルギー最低状態)へと収束させるアルゴリズムが実用化されています。微細化の「邪魔者」であるトンネル効果が、次世代コンピューティングでは「主役」として再定義されつつあります。

伊藤 翔太
著者

伊藤 翔太

マネー知識やキャリア形成に役立つノウハウを、初心者にも分かりやすく解説するのが得意です。