なぜ本作は、これほど優れたクオリティを誇りながら「ひどい」と言われ続けたのか。その構造的要因は、社会心理学における「心理的リアクタンス(現状維持バイアスへの侵害に対する抵抗)」で明確に説明がつきます。
人間は長年慣れ親しんだ愛着の対象(=大山のぶ代のドラえもん、整然とした芝山努の作画)が強制的に奪われ、新しい価値観を提示された際、その対象が客観的にどれほど優れていようとも、本能的に欠点を探して拒絶しようとします。「のび太の恐竜2006」は、まさに26年分の文化的愛着という巨大な岩盤に真っ向から衝突した作品でした。当時の批判の多くは、作品の欠陥ではなく、視聴者の心に生じた「喪失感の裏返し」だったと言えます。
公開から20年を経た「のび太の恐竜2006 現在の評判」は、極めて高い位置に落ち着いています。水田わさび版で育った新世代が大人になり、作画アニメーションの歴史を俯瞰できるようになった今、本作は「ドラえもん映画史上、最も攻めた芸術的傑作」として語り継がれています。これから本作を鑑賞する方のために、向いている人・慎重になるべき人の判断基準を提示します。
【本作を強くおすすめできる人】
- 躍動感あふれる手描きアニメーションの極致や、スタジオジブリ作品の描線が好きな人
- 子ども向けと侮れない、骨太でサバイバル感のある冒険活劇を楽しみたい人
- 神木隆之介氏の神がかった声の怪演と、スキマスイッチ「ボクノート」の涙腺崩壊演出を味わいたい人
【鑑賞に慎重になるべき人】
- 大山のぶ代時代の「安心して見られる、おだやかなテレビの延長線上の映画」を求めている人
- 激しいパースの歪みやラフな描線を「作画の乱れ」と感じてしまい、没入できない人
- 恐竜の捕食シーンやリアルな痛覚描写が苦手な、幼いお子様と一緒に鑑賞する家庭