映画『バズ・ライトイヤー』の制作発表時、日本のみならず世界中のファンを驚かせたのが主人公バズのキャスティング変更でした。長年シリーズを観てきた観客の間では「なぜ所ジョージではないのか」という疑問が渦巻きましたが、この声優変更にはピクサー制作陣が意図した極めて論理的なストーリーテリングの狙いがありました。
公式発表資料およびアンガス・マクレーン監督のインタビューによると、本作は「『トイ・ストーリー』の世界で、少年アンディが劇場で観てバズのおもちゃを欲しがるきっかけになった大ヒットSFアクション映画そのもの」というメタ構造で作られています。つまり、私たちが親しんできた「おもちゃのバズ」ではなく、そのモデルとなった「人間のスペース・レンジャーであるバズ」を描く独立した冒険活劇なのです。
原語(英語版)においても、おもちゃのバズを演じ続けてきたコメディアンのティム・アレンから、マーベル映画『キャプテン・アメリカ』などで知られるクリス・エヴァンスへと変更されました。これと完全に連動する形で、日本語吹き替え版もコミカルなおもちゃ像を体現してきた所ジョージから、シリアスで重厚な人間ドラマを卓越した演技力で表現できる鈴木亮平へとバトンが渡されたという経緯があります。決して不仲やトラブルによる「降板」ではなく、作品のコンセプトを突き詰めた結果のクリエイティブな選択でした。